01.26.2023
日本から海外配信

強まるクッキーの規制:米国の現状と消費者の動き

※Boundless株式会社は、米国に本社を構えるYahoo Inc.の日本法人です。

IDレスの世界について多くのことが言及されていますが、業界ではすでにCookie離れが進んでいるという見解もあります。その理由について見ていきましょう。

「Cookieポカリプス」、「IDレスの未来」、「Cookieレスの世界」。インターネットで少し検索してみただけでも、このトピックに関する記事が多く見つかります。業界ではいつ何が起こるかということを懸念していますが、世界は変わり、Cookie離れが進んでいるといっても過言ではありません。アイデンティティ、プライバシー、ガバナンスに関するシリーズの第1部となるこの記事では、その理由について解説いたします。また、米国におけるアイデンティティの現状や、2023年の予測についてもお話しいたします。  

 

1.法規制の強化により、アイデンティティ、プライバシー、ガバナンスが劇的に複雑化

個人情報保護は米国全体に広がり、各州がその動きを主導しています。2022年8月の時点で、米国の5つの州が包括的な消費者データプライバシー法に署名しています。カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)は、2018年に署名された最初の法律です。2023年1月1日には、CCPAにさらに大幅な変更を加えたカリフォルニア州プライバシー権法(CPRA)が施行され、また、同日には、バージニア州消費者データ保護法(VCDPA)も施行されました。また、ユタ州、コロラド州、コネチカット州の追加のプライバシー法も、2023年後半に施行される予定です。

2023年の最初の数週間だけで、18の州で新しいプライバシー法案が検討対象として導入されており、今後より多くの進展があると考えられています。このような個人情報保護関連のトピックは、パッチワークのようにつなぎ合わさり、さまざまな課題が残っているようです。

 

米国における連邦レベルのデータプライバシー法案は成立するか

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米国では、2022年6月に下院で、「基本的なデータプライバシー権を消費者に提供し、強固な監視メカニズムを構築し、実効性のあるエンフォースメントを導入する」ことを目的とした連邦レベルの米国データプライバシー保護法(ADPPA)が公表されました。この法案は2022年中に成立されませんでしたが、議会は2023年に法案を再提出し、年内に再び法案の成立に向けて推進すると予想されます。

ADPPAに関して最も重要で注目されている点は、基本的にADPPAが州法に優先されるということです。2  広告テクノロジー企業にとっては、これにより消費者のプライバシーへのアプローチが簡素化される可能性があります。しかし、より具体的なプライバシー法や、カリフォルニア州のCPRAのような一部の州法にも例外が認められる可能性があるため、広告テクノロジー業界にとってプライバシーへのアプローチが簡素化されるかどうかは議論の余地があるところです。消費者のプライバシーを保護する連邦レベルの法案によって、今後Cookieが消滅していくことは明らかです。

 

世界中に広まる消費者データ保護法

米国はデータ保護に関して進歩を遂げていますが、欧州連合はそれよりもはるかに進んでいます。GDPRは、2018年に施行された最も有名な消費者プライバシー法といってもよいかもしれません。オーストラリア、カナダ、インドなど、データ保護を定めているいくつかの国は、データ保護を強化するために取り組んでいます。世界的には、2021年12月の時点で、ほとんどの国で何らかの形の消費者データ保護法が施行されており、その割合は3年足らずで12%増加しています。この傾向は、今後数年間も衰えることはないでしょう。

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2.マーケターはアイデンティティソリューションの選択肢を広げている

非常に多くの法律が流動的であるため、マーケターは当然、機敏な対応の維持に努めることとなります。Eメールベースの認証は王道であり、それに次いでコンテキストが存在します。1,400の広告主とパブリッシャーを対象としたLotameによる調査では、マーケターがアイデンティティソリューションとして複数のアプローチを取る予定であることがわかりました。5

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自社データが基盤である一方で、規模拡大にはパートナーのサポートが不可欠

2021年5月にAd Perceptionsが100社のパブリッシャーを対象に行った調査では、サードパーティーパートナーのサポートがアイデンティティ戦略に不可欠であることがわかりました。

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3.消費者はすでにCookieレスになっている

サードパーティーのCookieを段階的に廃止するというGoogle Chromeの決定については、多くのことが言及されていましたが、その計画を2024年の後半まで延期するという発表を受け、さらに論争は続いています。IDレスの未来への道を切り開いているのは一体誰なのか見てみましょう。

  • 2017年9月 – Apple がインテリジェントトラッキング防止(ITP)をリリースし、クロスサイトトラッキングを防止
  • 2018年9月 – AppleがITP 2.0をリリースし、24時間のCookieアクセスウィンドウを削除
  • 2019年6月 – Mozillaが新規ユーザーのサードパーティーのトラッキングCookieのブロックを開始
  • 2019年6月 – MicrosoftがEdgeのトラッキング防止機能を導入
  • 2019年9月 – Mozillaが、サードパーティーのトラッキングCookieをブロックすることをすべてのユーザーに対しデフォルト化
  • 2020年1月 – Googleが、2年以内にChromeのすべてのサードパーティーCookieを段階的に廃止する計画を発表
  • 2021年6月 – Googleが、ChromeにおいてサードパーティーCookieのサポートを2023年後半に延期することを発表
  • 2022年7月 – Googleが、サードパーティーCookieの廃止を2024年後半に延期することを発表
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消費者はすでにオンライン時間のほとんどをCookieレスな環境で過ごしている

18歳以上の成人においては、コネクテッドデバイスでの動画視聴が、モバイル・PCなど他のデバイスを超えている

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 1日のうちでWebを利用する時間は、モバイルが圧倒的に多い

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しかし、モバイルWebに費やす時間は、モバイルアプリに費やす時間に比べれば、ほんのわずかである 

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マーケターはChromeaggedon(クロマゲドン)の可能性を信じているか

GoogleはサードパーティーCookieの廃止を何度も延期しており、Googleが2024年後半の期限を守るかどうか懐疑的な見方もでています。もし、GoogleがCookieを無期限に廃止しない場合はどうなるのでしょうか。あるいは、2024年の秋になり、クッキーベースのトラフィックが減少し、他のプライバシーに関する懸念がクッキーベースのプライバシーに関する懸念を上回ることにより、Googleは無期限に延期することを決定するようなシナリオもありえるのでしょうか。

パブリッシャーまたは広告主としては、当面の間、現状のアイデンティティソリューションの戦略を維持するのが妥当なのでしょうか。

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ポストCookieのプランニング事例

Cookieポカリプスが発生する頃には、消費者行動の変化により、Cookieベースの追跡はほとんど過去のものになっている可能性があります。

パブリッシャーと広告主がどのように将来に向けて取り組むかは、目標やリスク許容度によって大きく異なってくるため、興味深いところです。データガバナンスとコンプライアンスは、より良い意思決定を行うためのルールやフレームワーク構築をサポートします。このトピックについては、第2部で取り上げる予定です。

Cookieレスな未来はすでに到来しているのでしょうか。ウェブ経由の訪問者に対して、モバイル、CTV、その他のCookieレスな環境を介した訪問者には、どのような傾向が見られるでしょうか。また、各社は、IDレスの世界に対してどのようなプランを立てられているのでしょうか。

当社と一緒に、消費者のプライバシー保護と成長に向け、取り組んでいきましょう。

 

 

 1 Yahoo内部データ、2022年12月20日

2 Matt Davis、2022年8月5日「What is the ADPPA?」 Osano.com

3-4 UNCTAD、「Data protection and privacy legislation worldwide.」 UNCTAD.org

5-6 Lotame、2021年10月「Beyond the cookie:Identity solution adoption & testing among marketers & publishers.」 Lotame.com

7 Advertiser Perceptions、2021年5月「Preparing for a future without third-party cookies & IDFA.」 Advertiserperceptions.com

8 Sarah Polli、2021年11月30日「A brief timeline of cookie deprecation.」 Hearts-Science.com

9-11 Jessica Lis、2022年6月9日「U.S.time spent with connected devices 2022.」 Insiderintelligence.com

12 Ratko Vidakovic、(personal communication, 21 September 2022)、AdProfs.co

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